「…時々、考えるの。」


「…うん。」


「ママの人生は、幸せだったのかなって。」





私は、それからまた、ゆっくりと口を開いた。



「未婚のシングルマザー、
20歳で私を産んだママは……私が13歳の時に交通事故で死んだの。
それから、私は一人でここに住んでる。」



ジンは、ただ黙って私の話を聞いていた。


だから、私は話を続ける。




「ママは、あの人を心から愛していた。……でも、私を産んでから、ママはこの部屋で…まるで閉じ込められてるみたいだった。あの人を、ずっと待っていたの。
……でも、あの人が訪ねてくることは一度もなかった。ママの葬儀にも来なかったくらいだし、ね…。
当然と言えば、当然か。世間的に見たら、ママはただの愛人だから。
そんな人生が、本当に幸せだったのかな……。」


私は大きく息を吸い込んだ。




「ママは…テレビが嫌いでね、それは、テレビに映るあの人はまるで別人みたいに見えるからなんだって。
あの人は、豪華なマンションと金を渡しておけばいいと思ってる。だから、今だって一度も会った事のない娘に、バカみたいな大金を与えて、ときどき秘書の観月さんに様子を見に行かせる。
……私の父親は、本宮貴一郎なの。」


「…本宮って……。」





力なく微笑する。

他に、どんな顔をしていいのか、よく分からなかった。