「先生。」


「ん?」




先生が顔を上げる瞬間。









あたしは、先生にキスをした。









ほんの数秒。




たった数秒だ。







唇を離して、まだ触れてしまいそうな距離で呟いた。



「ガキだけど、大人になってくスピードは先生が思ってるより、ずっと速いかも。」






そのまま、あたしは先生に背を向けて歩きだす。





保健室の扉に手をかけた時、先生の声がした。




「雨音は可愛い生徒。
それ以上でも、それ以下でもなくね。」




あたしは振り返る事なく、保健室の扉を開けた。