「本当に免許あるんだろうなぁ!?」
「あります!…今は持ってませんが……。」
………はぁ!?
そこで、脳裏に甦る梨子の言葉。
― 「荷物は全て、『エース・マート』のロッカーに置いてきてしまいました。」
……免許証=ロッカーの中…………。
「……運転、ヘタ?」
「慣れていないだけです。免許を取ってから運転したのは、2回だけですから。」
「…………って、お前、それペーパーじゃねぇか!!」
ペーパードライバーに運転って……冗談じゃねぇ!!
「梨子、車停めろ。運転代わるから。」
「……朔ちゃん、気をつかわないでください。
私なら大丈夫です!
いつまでも優しさに甘えるわけにはいきません…。」
………俺、気ぃつかってんじゃねぇーよ!!お前の運転が不安なんだよっ!!
「ここからは山道です!
朔ちゃん、車酔いしないでくださいネ☆」
俺の胸いっぱいの不安を乗せて、黒塗りのベンツは山道へ突入。
あたり一面の紅葉も、今は全く目に入らない。