その後、梨子は声に出してきっちりと安全確認を行い、アクセルを踏んだ。
ベンツは緩やかに走りだす。
俺は、安心し始めていた。
けれど、それが間違いだった事に気づくのは、もう間もなくである。
「高速に乗ろう。もう少し距離を稼いでおきたい。」
「結構です!」
………はっ?
俺は、梨子の横顔を見つめる。
梨子は真剣な眼差しで運転している。
「いや、だからさ。」
「高速ばかり乗っていては捕まってしまいます!
今日は、高速は止めましょう!!」
俺の言葉を遮ってまで、そう言った梨子。
心に再び溢れる疑惑。
……コイツ…もしかして…………。
「…もしかして、高速乗れない人?」
「…………。」
「…高速道路の運転が出来ない人?」
「……だとしたら?」
「だとしたら、じゃねぇよ!!」
梨子は苦笑い。