ぱぁん、と発砲音。
それから、どたっ。
瞳を開けると、真っ白に広がる空。
あぁ、夜が明けた。
起き上がったあたしは、手のひらのぬるっとした感触に眉をひそめる。
手のひらは、真っ赤。
湖のように広がった鮮明すぎる赤の中に、横たわる男が一人。
右手には拳銃。
あたしは、男―……藤嶋 朔を抱き起こして、その顔を見つめた。
まるで、眠っているかのように穏やかだ。
本当に、お人好しな男。
たかが、マゼンタの絵の具を撒き散らしただけ。
拳銃だって、空に向かって撃った。
そして、あたしは瞳を閉じて横になっていた。
ただ、それだけ。
こんなものに騙されるなんて。
……まぁ、いい。
色々と計画をして、慎重にやった事に結果がついてきたんだから。
まだ温もりが残る、彼の肌。
「………朔ちゃん…。」
ぽつりと呟いてみた。
その声は、擦れて消え入りそうなほど小さな声。
あたしは、力なく微笑む。
彼を先ほどと同じように、地面に寝かせる。
少し冷たい風が、海の匂いを運んでいた。
波の音を聞きながら、あたしは歩きだす。
広々とした、この道を。
「チェリー、チェリー、
あなたとあたしは二人で一つよ、
チェリー、チェリー。」
さぁて。これから、どうしようか。
呟くように歌いながら、
この道をただ真っすぐ歩いていこうか。
血濡れのあたしは、一歩一歩進んでいく。
何もかも終わったよ、
お姉ちゃん。
はみ出した世界、あたしは一人。
手のひらに残る生温い感触、彼の温度。
あたしの頬を、一筋の涙が流れた。
〈 END 〉
はじめましての方も、
そうでない方も、
こんにちは!
水野ユーリです。
『真っ赤なチェリーの復讐』、如何でしたでしょうか?
私にとって、初のサスペンスという事で読みづらい点もあったかもしれません(汗)
この物語は、最初にタイトルが思い浮かんで、それから結末が思い浮かびました。
決してハッピーエンドでない結末は、実は最初から決まっていました。
本編の後半においてはコメディよりもサスペンスの流れとなっていますから、疾走感を意識してみました。
が、駆け足な展開になってしまった気もしております(汗)
書いていた私自身、一番の謎としたかった事。
それは、梨子は結局のところ朔を愛していたのか?という事です。
これをどう描くか、と最後まで悩みました。
そして、私は本編の最後の一行に梨子の思いを託したつもりでおります。
この物語は、コメディとサスペンスが混じり合っており、決して本格的サスペンスと呼べるようなものではありません。
(ツッコミどころ満載ですし・汗)
こんな拙い小説と最後までお付き合いしてくださった皆様には、心から感謝しております。
本当に、ありがとうございました。
2010年9月23日
水野ユーリ