翌日は、気持ちのいい秋晴れ。
移ろいゆく季節、風は少しずつ冷たくなっていた。
「梨子、デートしよう。」
「デート?」
「あぁ。」
俺は、そう言って笑った。
『スナック・リンダ』を出て、俺たちは手を繋いで海まで歩いた。
「海の匂いだぁ。」
真っ白な砂浜とブルーの海。
梨子は両手を広げて、深呼吸をした。
俺は、といえば、そんな梨子に背を向けて一人歩いた。
頭上の澄んだ空とは対照的な、濁った心を抱えたまま。
梨子が、俺の後を追う。
そうして、後ろから抱きついてきた。
……飛びついてきた、の方が正しいかもしれない。
「さぁくちゃんっ!」
「おっわっ!!」
「おんぶしてください!」
「…………。」
俺は返事の代わりに、梨子を背負う。
俺の肩に絡みつく、梨子の腕。