自分の枕の下から、問題の物を取り出した。
赤い表紙の薄いノート。
表紙に書かれた名前――………『 Shiori Mizusawa 』。
これが、この部屋にあった事を俺は梨子に言わなかった。
……さっき、引き戸の隙間から見た梨子は、俺が知っている梨子ではなかった。
酷く冷たい眼差し、無機質な話し方。
けれど、紛れもなく、奥田梨子なのだ。
俺が知らない梨子の顔。
― 「後悔なんてしないわ。」
ピストルを手にした梨子は、そう言った。
………梨子は、誰かを殺すつもりだ。
そして、リンダママと蓮見組の若頭は、それを知っている。
俺は、水沢の名前が書かれた赤いノートを見つめる。
分からない事が多すぎるんだ。
未だに、頭の中の整理だって出来やしない。
このノートに何かがあるかもしれない。
今は、このノート以外に縋る物がないのだ。
他人の物を勝手に見ていいのか。
だが、他に方法もない。
俺は躊躇いを捨てる。
息を呑み、赤いノートを開いた。