走りだした電車。
向井、小桜、吉守。
各駅で停車するが、やっぱり乗客は一向に増えなかった。
……サングラスの意味は、なかったかもしれねぇな。
「チェリー、チェリー、
あなたとあたしは二人で一つよ、
チェリー、チェリー。」
梨子が口ずさむ変な歌。
「……それ、誰の曲?」
「私が、子供の頃に作ったのです!作詞・作曲/奥田梨子です!」
ビシッと手を挙げる梨子。
「あなたって誰?」
俺の質問に、梨子は一瞬きょとんとした。
「あなたっていうのは………。」
「うん。」
「……もうっ!朔ちゃんったら!そんなの聞かなくても分かるじゃないですかっ!」
「……いや、分かんねぇよ!」
ツッコミを入れる俺を見て、ふふっと笑う。
梨子は指し示しながら答えた。
「“あなた”と“あたし”です!」
「……俺と梨子?」
「はい!」
………二人で一つ、か。