「蒼井さん。」
「えっ!?」
考え事をしていて、不自然な声を出してしまった。
「メリーゴーランド、乗らなくていいの?」
「えっ…と、うん…。」
メリーゴーランドじゃなくて、観覧車……観覧車……。
「でも、残念だったね。」
「え?」
「モモの奴。来れなくて、さ。」
「そう……だね…。」
モモの為にも…リベンジしなきゃ……。
「でも、驚いたな。アイツから遊園地に誘われるなんて。
中学の時は暗かったから。」
「……え?暗かったって………モモが?」
志木くんは、懐かしそうに遠い目をして言った。
「そう。高校入ってから、急にだよ。今みたいに、明るくなったの。
中学ん時は、何ていうか、教室の隅で難しそうな本読んでるタイプ?
いわゆる高校デビューだったのかな。」
そう言って、志木くんは言葉を続けた。
「昔は、あんな風に笑う奴じゃなかったな。」
……モモを変えたのは、モモが恋をしている女の子。
あたしの胸は、チクリと痛んだ。