……こういうところで、きゃあ!、とか言って抱きついたり………なんて、出来るわけない。
相手が、モモなら未だしも…………。
『処置室』と書かれた部屋の前を通りすぎる時だった。
「ヴオォォォーー!!!」
その処置室から、顔がドロドロに溶けたゾンビが地獄の底からやって来たような叫びを上げて、ものすごい勢いで出てきた。
瞬間、あたしは声にならない声を上げて、背後の壁に後頭部を激突。
本気で思った………。
帰りたいっ!!!
志木くんはといえば…………なんと、まさかまさかの、ノーリアクション。
……あの、リアクション違くないっすか……?
後頭部をぶつけたあたしと、
ノーリアクションの志木くんと、
志木くんの視線に戸惑ってしまっているのか微動だにしないゾンビ…………。
何とも言えない数秒の沈黙の後、志木くんは口を開いた。
「行こっか?」
「……えっ!あっ、あぁ、うん………。」
…普通だ……。
120%普通だ………。
あたしの心は、
さらに、さらに、萎縮していく。