校庭の桜の木々は、まだ一輪の花もつけていない。
あたしは最後を惜しむように、ゆっくりと校庭の土を踏みしめた。
校門の前まで来た時、携帯電話を手にした志木くんがそこに突っ立っていた。
「志木くん?あれ?
みんな、カラオケ行くって言ってたけどいいの?」
「あぁ……約束あってね。」
「…もしかして、花波ちゃん?」
「よく分かったね。」
志木くんの表情からは何も読み取れないけど……そっか、花波ちゃんも頑張ってるんだ………。
「蒼井さん。」
「ん?」
「もしかして、モモの見送り?」
「……一応。」
あたしが答えると、志木くんは一瞬の間の後で口を開いた。