教室に戻ると、美帆が駆け寄ってきた。
「エリ!写真撮ろうよっ!」
美帆はデジタルカメラを手に、そう言った。
「うん。」
教室の窓辺で、顔を寄せ合って写真を撮る。
周囲を見渡せば、誰もが卒業という別れを惜しんでいるようだった。
「エリ!もう1枚!もう1枚撮ろっ!」
人生は出会いと別れの繰り返し、
フジコさんの言葉を思い出す。
美帆ともう一度顔を寄せ合って、あたしはニッコリ笑う。
無理なんて、これっぽっちもしてない笑顔。
美帆に、勝手にイライラしてウンザリした日もあったけど、今なら分かる。
あたしは、美帆と友達になれて良かった。
一緒にお弁当を食べたり、
夜遅くまで語り合ったり、
大笑いしたり、
ケンカしたり。
美帆がいたから、あたしは決して一人じゃなかった。
何でもない毎日が、不機嫌でイライラしてた日々だって大切でかけがえがない。
学校なんて、そんなに好きじゃなかった。
でも、これで最後だ、と思うと酷く寂しい。
もう、この教室に来る事も、
廊下側の1番前の席、あの席に座る事もないなんて……。