「あの日、アンタ失恋でもしたのかと思ったんだ。」
「え?」
「でも、違ったね。
アンタは、自分の未来を悩んでた。」
フジコさんは一拍おいて、言葉を続けた。
「アンタの良いところは、そういう生真面目なとこだ。でも、少し生真面目すぎるんだよ。
アンタのボーイフレンドもね。」
あたしは、言葉をなくす。
この人は、いつもそう。
的確な物の言い方をする。
そうして、それが少しもウザったく響かないから不思議だ。
「このままでいいのかい?アンタは、そんなにバカじゃないはずだよ。」
「…フジコさん……。」
「人生なんてね、出会いと別れの繰り返しなんだ。
でもね、
出会いにしても、別れにしても、アンタ次第で色々な色になる。若いうちに経験する事は、苦しかった事も、楽しかった事も、時の流れと一緒に特別なもんになるんだよ。」