「受験勉強は、大変そうじゃなかったようだけど。」
「無理せずに行けるところにしたんです。進路を決めるのが遅かった分、焦りもあったんですけど……。」
窓の外は日が暮れて、
深い藍色の空が広がる。
室内と外との温度差で窓ガラスは白く曇っていた。
「明日は、もう卒業式だっけ?」
「はい。」
フジコさんは、煙草の煙を器用に吐き出した。
「アンタが初めてウチに来てから、もう半年近くか。早いもんだ。」
「…そうですね。
あっ、そうだ!今度また、南瓜のポタージュ作ってくださいね。」
「ん?」
「初めてここへ来た日の、あのスープ本当に美味しかったから。」
あたしの言葉を聞いて、フジコさんは目を細めた。
「あぁ、いつでも構わないよ。」
フジコさんは、また煙を吐き出す。