校庭で、モモが立ち止まる。
空の茜色が落下するモモの背中。
そして、数秒後…………モモの声があたしの耳に響いた。
「もしもし?」
「…………。」
「……エリー?」
不安げなモモの声。
途端に、あたしは泣きたくなる。
出来る限り明るい声を、何とか絞りだした。
「モモ。」
「…ん?」
文化祭の日から、一言も言葉を交わす事がなかった。
そのせいで、不自然な間を作ってしまう。
「あの、さ。」
「うん。」
「……久しぶりだね。」
「……久しぶりだね。」
モモの声は、酷く優しい。
校庭でモモは立ち止まったまま。
あたしが見ている事なんて知らない、無防備な背中。
あたしは、窓から手を伸ばす。
その背中に触れられたら、と願うけど、勿論そんな事ができるはずもない。
あたしの手は、ひらひらと空中を掴むだけだ。