教室へ戻ると、既にみんな帰ってしまった後で誰の姿もない。
閉め忘れた窓から風が入って、カーテンがひらりひらりと舞っている。
その一つ一つの窓を閉めながら、校庭を見下ろした。
3階の、この教室からでもすぐに見つけられる。
校門に向かって、自転車を押して歩くモモの後ろ姿。
あたしは、制服のポケットから携帯電話を取り出して、モモの電話番号に辿り着く。
目ではモモの後ろ姿を追いかけた。
最後のボタンを押せば、本当に久しぶりにモモの声を聞く事ができる。
そして、伝えるべき事を伝えられる。
でも、その最後のボタンを押せず、躊躇ってしまう。
大丈夫。
きっと大丈夫。
もう一度、自分に言い聞かせるように心の中で呟く。
あたしは、意を決して最後のボタンを押した。