河原に着くなり、太一は虫取りに夢中だった。
茂みを掻き分けて瞳を輝かせる太一を眺めながら、あたしは深呼吸をした。
どこか遠くで、カラスが鳴いている。
「サボってないで、エリも虫探せよ!」
「“探してください”でしょう!」
文句を言いながらも、あたしは屈んで地面を見つめる。
草、草、草。
虫なんて一匹もいない。
……それも、そうだ。
今年の夏は長生きだったとはいえ、もう秋なのだし、大体もうすぐ冬なんだから。
「……エリ、さん?」
後ろから名前を呼ばれて振り返る。
「やっぱりエリさんだ。」
そう言って微笑んだのは、モモの幼なじみ………花波さんだった。
大きなゴールデンレトリバーを連れている。
「あたし、犬の散歩で……エリさんは?」
「あっ、えっと………子守?」
懸命に虫を探し続ける太一を見て、あたしは答える。
「子守?」
花波さんは、きょとんとしていた。