「そういう可愛くない事言ってると、モテないよぉ?」
あたしは、太一の顔を覗き込んで言った。
しかし、太一ときたら、澄ました顔でさらりと答える。
「エリに心配されなくてもクラスの女子は、みんな俺の事が好きなんだよ。」
…………なんて、自信だ……。
「そうですかっ!
大体ねぇ、こっちは年上なんだから呼び捨てにしないでくれる?」
「はい、はい。オバさん。」
「……アンタねぇ…。」
あたしは呆れて、
でも、実はどこかで楽しんでいたりする。
生意気でマセてはいるけど、小学3年生。
太一は、店からずっとあたしの手を握ったまま離そうとしない。
結局は、寂しがり屋で構ってもらいたい小さな子供なのだ。
それに、この子は少し、あたしと似ている気がする。
素直になれないところなんか、特に。
太一の小さな手が、あたしの手を握っている。
子供の手は、何でこんなフニフニしてんだろ。
そんな事を、ぼんやりと思っている。