店主は言葉を続けた。
「“夢”なんてのは、すぐに見つかるもんじゃない。アンタは、それを見つけたくて焦ってる。
ボーイフレンドと対等でありたい、追いつきたい、と思ってだね。
その歳で自分の道を歩きたいと思えるだけ立派だよ。大概は、男に流されちまうからさ。」
あたしの目を見て、店主は言った。
「長く店をやってるとね、時々アンタみたいなのが迷い込んでくる。最近は、珍しいけどね。
メシなら食わしてやるから、いつでも来な。」
そう言って、店主は煙草に火をつけた。
大きな手、細く長い指、皺。
働く女の手だ。
その時、喫茶店の扉が勢いよく開いた。