添えられていた木製のスプーンで、そのとろりとした液体をすくう。





口に運んで、体内へ流し込む。





熱いスープは、ゆっくりとあたしの中へ染み込んだ。








穏やかな味がした。






南瓜の優しい甘み。










大袈裟かもしれないが、それは幸せな味だった。






あたしは、心底ほっとして、張り詰めていた糸が切れたみたいに涙が溢れた。




自分の中のゴチャゴチャとした感情が溶かされていく気がした。



スープを飲みながら、漏れる嗚咽を隠せない。







…何やってんだろう、あたし。

格好悪くて、ダサくて、バカみたいだ。






店主は、きっとあたしが泣いている事に気づいているだろう。




それでも、何も言わず、ただ広げた新聞に視線を落としているだけの店主の存在が有り難かった。









涙を拭いながら口にした熱いスープの味を、
あたしはきっと、ずっと覚えているだろう。