図書館は静かで快適だったが、結局あたしは1時間ともたなかった。
晴れたブルーの空に点々と雲、雲、雲。
もうすぐ、息の長かった今年の夏も終わる。
秋は、もう、すぐそこまで来ていた。
駅の近くの通りは、たくさんの店が立ち並んで人も多い。
この田舎町で、他に時間を潰せそうな場所が思いつかず、あたしは洋服屋や雑貨屋を冷やかして回った。
昼食は、偶然見つけた小さな喫茶店で取る事にした。
『ジロー』というシンプルすぎる名前の喫茶店は、そこだけ時間が止まっているみたいに古臭かった。
店内は薄暗く、聞いた事もない歌謡曲のような音楽が流れている。
客は誰一人いなかった。
何となく居心地が悪く立ち尽くしていると、カウンター席の奥から店主らしき人物が顔を出した。
頭にスカーフを巻いて、サングラスをかけたオバさん……おばあさん?
そんな不思議な風貌の店主は言った。
「どこでも好きに座んな。」
「あっ、はい……。」
戸惑いつつ、1番近くのテーブル席に座った。
この店に入ってしまった事を、あたしは既に後悔していた。