そうして二人とも、ぐちゃぐちゃのボロボロになった頃。
騒ぎを聞きつけた担任の菊りんがやって来て、それぞれ個別に事情を聞かれる始末になった。
「でもなぁ、先に手出したのは蒼井なんだろ?しかも、コーヒー牛乳って…。」
ノイズがかかったような耳障りな声で、菊りんは言った。
職員室の、無駄に高級そうな椅子に座らされて、あたしは捕獲された珍獣にでもなった気がした。
いつも微妙にデカくて合っていない、菊りんのネクタイを眺めながら。
「まぁ、とにかくだ。
ケンカ両成敗、だからな。瀬名にも校庭の花壇の草むしりっていう罰を与えたわけだ。」
あたしは、菊りんの話をどこか他人事のように聞いていた。
あれくらいの事でキレるなんて、どうかしていたのだ。
築き上げた優等生の崩壊をクラスメート達は、どう思っているだろう。
……何とも思ってないか。
所詮は、他人事なのだから。
ただ、あたしを見る目が少し変わるだけだ。