今の悩みは、受験オンリー。 その程度の平凡少年。 …だけど。 「あ……」 ――彩と別れて、帰りの方面の電車に乗り込んだ時。 人混みに紛れて…あの横顔を見つけた。 「……柚、先輩…?」 白くて小さな、整った横顔。 ふわっとした柔らかな茶色の髪。 多少化粧はしているけど変わらない。 だけど夜の電車は混んでいて、少し離れた距離は埋めようがなかった。 声が届かない。 「…柚、先輩!」 もう一度呼んでみる。 微かに先輩の肩が、ぴくっと動いたように見えた。