誰にも言わない。 見なかったことにする。 つもりだった、 ――のに。 「…大地?」 「あ、ごめん。起こした?」 兄貴は目をこすりながら、訝しげな表情を俺に向けた。 「…どうかしたか?」 「いや……なんでも、ない」 兄貴から咄嗟に顔を背け、 目をごしごしこすった。 ――弱くてごめん、日向先輩。 そう思うとちょっと泣けて。