でもとりあえず、がむしゃらに走り続けて。
曲がりなりにも前を向こうとして走り続けていくんだろう。
挫けそうになったらきっと…あの優しい先輩たちが叱ってくれる。
『まだスタートラインじゃんか』
いつかの、日向先輩の声がする。
そう。
―――まだ始まったばかりなんだから。
ゴールはどこにしよう?
あの空を目指してみようか。
旅を終わらさないために。
誰かの言葉が胸によぎる。
―――あの白に
―――――届くまで
走り続けようか。
また忙しい毎日を
生きていこう。
気が遠くなりそうな未来も
いつの間にか眩しく見えていた。
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相原日向先輩
お元気ですか?
風邪ひいてませんか?
無茶してませんか?
長々と手紙を書いてみたりもしたのですが、
結局言いたいことはたったひとつだということに気付いてしまったので。
2年越しの手紙を書き直しました。
うん、2年越し?
手紙を書き始めて2年が経ったってことですよ。
なんだかずいぶん紙を消費してしまいました。(笑)
えっとですね。
――先輩は俺にとって、永遠のエースです。
何年経っても変わらないどころか
降り積もっていく思いがきっとあります。
どうか知っていてください。
…ただそれだけを、伝えておきたくて。
今でも鮮明に思い出します。
2年前、たった一週間で駆け抜けた、あの旅。
初めて自分の意志で駆け出していった旅。
そして、夢を見つけました。
今から久しぶりに藤島メンバーで集まるので、ゆっくり話をしてこようと思います。
いろいろ迷いもしましたが、俺は結局ここに帰ってきました。
先輩も、いつか気が向いたら帰ってきてくださいね。
先輩が帰ってきてくれるなら、俺たちはいつでもあの部室に向かいます。
懐かしい話をたくさんしましょう。
のんびりと待っていることにします。
それではそれでは。
またいつか。
K大学スポーツ科学部
スポーツ教育科2年
風倉大地
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あの白に届くまで【end】
こんにちは。お久しぶりですね。繭です(^-^)
このあとがきを書きながら気付いて、びっくりです。ちょうど一年前のことなんですね。風キスこと「風にキス、君にキス。」が日本ケータイ小説大賞を頂いたのは。
ついこの前の出来事に思えてしまいます。(笑)
この「あの白〜」は、風キスを読んで愛してくださったたくさんの方々、続きが読みたい!と願ってくださったたくさんの方々に「何かでお返ししたい」と考えて、ようやく辿り着いた作品です。
もっと短くする予定だったのですが、なんだか中編みたいになってしまいました(゜∀゜;)
主人公は風キス本編ではちょこっとしか出てこなかった、"大地くん"。
物語のラストで鍵を握るのは、本編では名前さえ触れなかった人物だったりします。
何故、そんな人たちをこの物語の主役にしたのか。
それは、日向や柚たちからは見えない世界…見えない視点がきっとある。
そう考えたからです。
自分の進路に迷う、生きる道に迷う…そんな大地くんは、かつての私の姿でもあります。
そしてきっと、これを読んでくださっている皆様のうち誰かの姿でもあることでしょう。
もちろん、大地くんのように受験中に旅に出て欲しいわけではありません。(笑)
でも決して、答えを見つけることを諦めないでください。
答えは案外すぐ傍にあるのかもしれないから。
風キスを愛してくださったすべての方々に、この物語を捧げますm(_ _)m
本当にありがとうございました。
心から、愛を込めて。
2011.2.3 繭
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