「……え…?…」 その瞬間、いろんな"感覚"を思い出した。 最後の大会で駆け抜けた時。 部室独特の、あの匂い。 笑い合ったあの空間。 …憧れて止まないあの人の、綺麗なフォーム。後ろ姿。 「……!」 ばっと後ろを振り向いた。 けれどそれはもう、改札口から出てきたたくさんの人たちの後ろ姿に紛れ込んで。揉み消されるように、消えていって。 泡のように溶けてしまった。 でも今、確かに"藤島の風"が吹いたこと。 見間違いなんかじゃない。そう確信していた。