電話越しに、ソニアが何やら言っているのが聞こえた。
兄貴によると、どうやら俺との別れを惜しんでいるらしい。


「でもソニア、今からピアノのレッスンだから空港には見送りにいけないらしい。大地に会いたいってうるさいよ」

「…あはは」


可愛いな。
そう微笑むと、俺は兄貴に言っておいた。


「兄貴、ソニアは天使だったよ。本当に。いろんな意味で。ミシシッピ川に沈めなくて良かった」

「なんだそれ」

「ソニアに替わって」



ほどなくして、待ちかねたような高い声が俺の耳をつんざいた。

若干、携帯を耳から離す。



「ダイチ!」

「はいはい」

「ゼッタイ、また来て!プリーズ、カム、トゥー、シー、ミー!」


絶対にまた会いに来て!

そう言う可愛い天使に、俺は笑って「オフコース」と答えた。



最後にもう一度会いたかったな。と残念に思った。



「サンキューベリーマッチ、ソニア。……心から」


―――ありがとう。