カナさんはマグカップを流し台に持っていくと、それを洗いながら言葉を続けた。 「リンゴを拾ってもらっただけで、男の子を家に上げようなんて、普通は思わないんだけど」 カップを洗う水の音が響いた。 俺は、柚先輩にとても良く似たその後ろ姿を見つめていた。 「それでも、思わず大地くんを家に上げてしまったのはね。 …わたしにも、あなたに良く似た、日本人の友達がいたからなの」 ―――少しだけ昔話をしていいかな? 彼女はそう言って、小さく笑った。