「ふあぁ。」
「なぁに?寝不足か?」
独特のハスキーな声で、そう言ったヒメ兄・チサトに対して「まぁ……。」と言葉を濁す俺。
誰のせいだと思ってんだよ!!
寝起きが悪いヒメは、未だ熟睡中。
俺が作ったトースト、目玉焼き、簡単なサラダという定番の朝食をちゃっかり食うヒメ兄・チサト。
「しっかし、この部屋さみぃな。暖房器具が電気ストーブだけって……。
せめて、こたつくらい買いなさいヨ。」
「いや……そうしたいんすけど、金がないんで。」
「金?これは?」
そう言って、ヒメ兄・チサトが手にしていた物に俺は目を見開いた。
なぜなら、それは俺の唯一の趣味である500円玉貯金箱だったからだ。
いつかヒメと旅行にでも行けたら、とコツコツ月日を重ねて貯めてきた俺の宝!!
「けっこう重いぜー?」
「いや、それはちょっと……。」
「んだよぉ。ケチな男はモテないよー?」
俺は苦笑した。
モテなくて結構。
愛しのオヒメサマさえいてくれたら、俺はいいんだから。
「あっ!そう、そう。カズキくん、今日は何時頃お帰りで?」
「……日付が変わる前には帰れると思いますけど?」
ヒメ兄・チサトは、目玉焼きを頬張りながら「ナイス!」と言った。
「何かあるんすか?」
「何かって……。今日、大晦日じゃん?今夜は三人で宴会だ!!」