「おでん買ってきて!」
「………いま?」
「いま。」
「…………ヤダ。」
「買ってきてくれないの?おでん食べたいー。」
「……外さみぃし…。」
「食べたいなぁ。食べたいなぁ。」
「…………。」
「カズキぃ。」
「…………あぁ!!もう分かったよ!!買ってきますよ!!買ってくりゃいいんだろ!!」
俺は、財布を掴むとドタバタと部屋を出る。
「はんぺんと餅巾着多めでー」とヒメは俺の背中に言った。
多めでって何だよ!と心の中でツッコんだ。
さっき通ってきた帰り道、今度はコンビニまで自転車を走らせる。
酔っ払っていなくても、酔っ払っていても、ヒメのワガママは日常茶飯事。
愛しのオヒメサマの大好物は酒……と、おでんである。
始発の電車で、当時高校生の酔っ払ったヒメに絡まれたのが三年前の十二月。
酒癖の悪さも、ワガママも、次第に可愛く思うようになってしまった俺は首までどっぷりヒメに浸かっている。
可愛い可愛いオヒメサマには頭が上がらない。
裸の桜並木の下を、俺は「チクショーーー!!」と大声を出しながら自転車のスピードをあげた。