「抜―かしっ」
 

石段を半分くらい
登ったところで抜かれてしまった。
 
 
「さすが……サッカー部の自称エース……」
 
 
痛くなった横腹を押さえながら、
立ち止まると苦笑いした。
 
もう走れない。
 
アイスが全部溶けてしまい、
口の中には木の棒だけが淋しく残っている。
 
石段の錆びた手摺りに掴まると、
私はその場にしゃがみ込んだ。
 
毎朝この辺でバテてしまう。
 
 
手摺りの向こうには、私たちが住む町と一面の海が広がっている。
 
 
「志津、早くしろや―!! 1限に間に合わねぇぞ―」
 
 
遥か上から、陸が呼んでいる。
 
 
「わかってる―!!」
 
 
カラカラになった喉で怒鳴った。