「まぁ、一応やってるみたいだな」


陸が体育館のドアに手をかける。


重たい体育館のドアが少し開かれると――、


たくさんの笑い声と、テレビの解説者の声が大音量で外に溢れ出した。


「う……っわぁ……」


思わず感嘆の声が出る。

日本代表のユニフォームを着た町民で体育館の中はごった返していた。

おばちゃん連中はあちこちで輪を作って世間話を繰り広げているし、おやじ連中は缶ビールを持ち込んで酒盛りしている。

ステージに設置された大型スクリーンの前では先生達が慌ただしく作業していた。


「なに、この人数……」


「町中集まったんじゃねぇ?」


「すごい熱気ねぇ」


ばあちゃんが楽しそうに辺りを見回す。

あまりの人の多さにドアの前で立ち尽くしてしまった。

用意されたパイプ椅子に座れない人たちが大勢立っていた。

『悠太、ファイト』なんて書いた横断幕を持ったおじいさんまでいる。


「すげぇ……俺も作ってくれば良かったな……うちわとか……」


あっけにとられた陸がちょっと羨ましそうに言った。


「そ……そうだね……」


集まった人たちの熱気に押され気味になりながら、返事をした。




返事をしたあとに、それじゃあ某アイドルグループのライブじゃないか、と心の中でつっこむ。