ごとん、と低い音がして悠太を乗せた電車がゆっくりと動き始めた。

悠太がいなくなる。

反射的に陸が動き出す。

その背中を私も追う。

こんなのドラマの世界だけだと思ってたのに、気が付いたら夢中で電車を追いかけていた。


「悠太、泣くな!」


ぼろぼろに泣きながら陸が叫ぶ。

悠太はずっと背を向けている。


「いってらっしゃーい!」


精一杯の笑顔を作って志津は電車に手を振った。

目に溜まった涙も、真っ赤になった鼻も、全部気のせいだ。