小さい頃から何があっても、大人にどんなに怒られても、どんなに怖い思いをしても、絶対に泣かなかった悠太が泣いていた。


陸も私も初めて見る悠太の涙に言葉を失って固まっていた。


だって『ありがとう』と悠太に言われるだけの事をしていない。


私たちは、悠太にもっとたくさんの『ありがとう』を言わなきゃいけないのに。
言葉が出てこなかった。


「まもなく電車が出発します……」


プーと汽笛が鳴って、ドアが閉まった。

悠太は私たちから隠れるようにして、背中を向けた。

肩が震えている。