「ばーか。だから来て欲しくなかったんだよ」


片方の眉毛を下げて苦笑いした悠太が、ふたりの肩を抱き寄せた。

陸の肩におでこがぶつかる。

悠太の暖かい体温が制服越しに伝わってきて、頬が熱くなった。

こんな時にも関わらず、容赦なく心が高鳴る。


「良かった。志津が口聞いてくれて」と、悠太が小さく言った。


胸がぎゅうっと締め付けられる。

どうしようもないくらいに、苦しい。

ごめん。と心の中で謝って、黙ったまま小さく頷いた。

多分今、口を開けば私は泣いてしまうから。

駅に機械のアナウンスが鳴り響く。


「11時5分発、東京行きの電車が1番ホームに到着します……」


「じゃあ行くかな」


寂しそうに笑うと悠太は私たちの肩から手を離す。

悠太の肩越しに、電車がホームに入ってきたのが見えた。

金属と金属のこすれる音がして電車が止まる。

3人とも黙ったまま、ホームへと歩いた。

あと、一緒にいられる時間はほんの数分。

別れの時間がどんどん迫ってくる。

寂しさに押しつぶされそうだ。