10時58分。


駅がようやく見えてきた。


――悠太の乗る電車が着くまであと7分。



ボロボロ木造の駅は、木がところどころ腐っている。

屋根には昨日降り積もった雪がどっさりのしかかっていて、今にも駅を潰してしまいそうだった。

しかし、さすがに駅の前までくると、道は綺麗に雪かきされている。


「雪道は抜けたな、全速力で走るぞ」


そう言って陸が駅に向かって一目散に駆け出した。

陸の背中を追って私も駆け出す。

雪の積もった道よりも遥かに走りやすい。



駅のガラスドアに駆け寄ると、木のベンチが並ぶ小さな待合室が見えた。


備え付けの古いストーブの前に、制服姿の悠太がヘッドフォンを付けてひとりで座っている。