「……もう1回、やってみようか」


泣き腫らした目をこすりながら、陸がポツリと言った。


「ミサンガ、作ってみよう」


私は、鼻水をすすって声を出さずに頷いた。

まだ喉がひっくひっくいっている。


「ちゃんと説明読んでみるか」


私たちは本を再び真剣に読み始めた。なるほど、と陸が納得する。


「さっきは、多分ここで絡まったんだと思う。次はここのところ、志津が半分持ってて」


「うん、分かった」


陸が指差した工程を確認すると、私は緑と黄色の刺繍糸を取り出した。


「ロンドンに行くのに、ブラジルカラーかよ」


「いいじゃん、別に」


口を尖らせながら、2色の刺繍糸をテーブルに固定する。


「よし、やろう」


私たちはかつてないほどに集中した。1本1本の糸に色々な思いを込めて編んでいった。

悠太に向こうでたくさん友達が出来ますように。

いつも笑顔でいられますように。



そして、いつも幸せでありますように。