ああ。
悠太の立場になって考えられる陸の方が、私よりずっと大人だ。


「プロになれるチャンスなんだ。絶対そっちに行くべきだろ」


力強く言い切った陸に、そうだね。と志津が頷く。


「と、言うのは頭ン中で思っていたことで実際に悠太には言えてない。悠太には“そっか、すげぇな”としか言ってねぇからな。今から話す本音が俺の器の小せぇところだ」


「は?」


「いいか。悠太には絶対に言うんじゃねぇぞ」


陸が一回鼻をすすった。
「俺だって、プロになりたかった」


返す言葉にぐっと詰まる。陸が中学生になった途端、『サッカー選手になりたい』と言わなくなったのを思い出す。


「でも悠太を見てれば俺がそのラインに立てないことだって、俺にその才能がないことだって分かってた……それでもやっぱり……めちゃくちゃ悔しかった」


「ほんとにちっさ……」


そう言いながらも、涙がだらしなく流れた。陸だって色んな思いを抱えてたんだ。

陸が涙声で「うっせー」と笑った。


「だから俺はまだ、悠太に“おめでとう”って言えてない」


相変わらず涙を流しながらも少し落ち着いた陸が元の位置に座りなおす。


「あと、ありがとうも」