「だから、私嫌だった。悠太がロンドンに行くの、嫌だった」


「うん、知ってる」


「でも、悠太の気持ちなんか1ミリも考えてなかった。自己中心的に悲しんで、暴走して、悠太に酷いことしちゃった……」


「知ってる」


真っ直ぐに志津を見つめる陸の目を、キッと睨み付けた。


「し、知ってる知ってるって、さっきから何なのよー!」


陸の肩を足で蹴る。


「お前の気持ちなんて、傍から見てたらバレバレなんじゃーっ!」


陸は叫ぶと肩に乗った志津の足を払いのけた。反動で志津が床に転がる。


「いったー!!」


「さっきから一生懸命冷静に話してたけど、もう我慢の限界だ! 俺は悠太みたいに冷静には話せねぇ!!」


陸が立ち上がって志津を見下ろす。


「……俺だって寂しい! いや、むしろお前の数万倍寂しいわ! ボケ!」


陸の目から涙が次から次に溢れ出してくる。陸の涙なんて何年振りに見たんだろう。


あっけにとられていると陸が叫んだ。


「国立に行こうってずっと約束してた俺の気持ちがお前に分かるのか!?」


うわ。コイツの気持ちも忘れてた……。


「裏切られた……とか?」


「だからお前はバカなんだ! 俺は悠太のこと、これっぽちも怒ってない。何で
か分かるか?」


「分からないけど……なんで……?」


「俺が悠太でも同じ選択をしたからだ」