「陸はジャンケンが弱いねぇ」
そう言うとばあちゃんは、よっこらしょと曲がった腰で立ち上がって、棒アイスを2本取り出した。
苺とメロン。私たちのお決まりの味だ。
よく冷えた2本のアイスは、太陽に照らされて白い煙を出している。
「はい、120円だよ」
「今月、金ねぇのに……」
陸は半泣きになりながら、だぼだぼのズボンのポケットから10円玉を12枚取り出して、ばあちゃんに渡した。
シワシワの手でお金を受け取るや否や、ばあちゃんが叫ぶ。
「はい、どうも。ほらふたりとも遅刻だよ!! さっさと行きなっ」
「いってきま―す」
アイスを口にほおりこんで、私達は一斉に走りだした。