小さい町だから、噂はあっという間に広がった。

悠太がロンドンへサッカーのために留学するらしい、と。

志津達の高校はロンドンに姉妹校がある。

悠太はそこへ留学することになった。
向こうのクラブチームに所属して、練習をするらしい。


――全部、噂で聞いた話だ。


だってあの日以来、悠太とは口を聞いていないから。

あれからというもの、私は悠太を露骨に避けまくっている。

周りの友達は「どうしたんだ、あいつら」と苦笑いして首を捻っていたけれど、そんな事いちいち説明したくはない。

どうせ「志津、わがままだなー」と笑い飛ばされるに決まっている!

悠太が話しかけようと近付いて来れば走って逃げたし、

「志津―」と呼ばれても聞こえない振りをした。

梢子が「悠太呼んでるけど……」と気まずそうに囁くのだって無視した。

避けられているのは分かっている筈なのに、何度も話しかけようとする悠太の無神経さに腹が立つ。

もう私の事は放っておいて欲しい。


私は何が何でも絶対に悠太とは話さない!



だって話すと「行かないで」と言ってしまいそうだから。