膝からうっすらと血が滲む。


走ると冷たい風に当たって刺す様に痛んだ。



でも――……。
こんな傷、全然痛くない。
心の方がずっと傷だらけだ。



喉の奥がぎゅっと締め付けられ、我慢していたはずの涙が溢れ出す。

悠太が、一気に遠い存在になってしまう。


この町から……悠太がいなくなる。


血の滲む膝を抱えて、積もったばかりの雪の上にしゃがみこんだ。


「好きなのに……」


嗚咽が漏れる。
誰もいない海沿いの道で声を出して泣いた。