「今日見たいテレビがあるんだった!じゃあまたね」


悠太の目も見ないで、急いでテトラポットから飛び降りる。

顔を見てたら泣いてしまいそうで、一刻も早くここから立ち去りたかった。


「わ!」


飛び降りた途端、体のバランスが崩れて思わず間抜けな声が出る。

前のめりになったまま、雪が薄く積もったアスファルトに膝から着地した。

膝に鈍い痛みが走る。


格好悪……。


「おい、大丈夫か!?」


慌てた悠太がテトラポットから飛び降りた。


「来ないで!!」


駆け寄ろうとする悠太に向かって叫ぶ。
怒ってると思われたかもしれない。


悠太の足音が止まり、自分の呼吸と波の音だけが大きく聞こえる。


「……大丈夫だから」


振り向かない。

振り向けば、悠太が心配してくれるだろう。



でも……今振り向いても笑える自信がない……。


目の前が涙で滲んでいた。



「ばいばい」