「……そっか。すごいじゃん」


平気な声を装って、悠太の肩をたたいた手が小刻みに震える。


「さっきは、突然ロンドンって聞いたから驚いちゃったけど、案外近いもんだよね!」


悠太は笑いもせず無表情で「うん」とだけ言った。
せめて笑って欲しかった。

一世一代の強がりに、気が付かないふりをして欲しかった。

本当の気持ちなんか言えるわけない。

『行かないで』なんて言えない。



だって私は、彼女でもなんでもない。
ただの幼なじみだから。



「日本代表になれるかもなんて、すごいチャンスじゃん、私も幼なじみが有名人になったら嬉しいよ」



自分に言い聞かせるようにして笑った。



こんな……こんな小さな町に居たら、叶う夢だって叶わない……。

こんな町にいつまでも居たら、悠太がダメになる。