マネキンが並ぶショウウインドウを横目に、裏手に回る。

裏口の真新しいドアを手馴れた手つきで開けると、暖気が冷えた体を包み込んだ。


いつものこの時間なら、裏口を入ってすぐの台所におばちゃんがいるはずはのに、今日は誰もいなかった。

鼻の下まで巻いていたマフラーを取ると、つんとした匂いが鼻を刺激した。

悠太の家は立て替えたばかりで、新築独特の匂いがする。

ポケットから電球を取り出し、おばちゃんを呼ぼうとした。

その時、中から聞き覚えの無い男の人の声がした。


「そこを何とか考えてみてはもらえませんかね?」


やば。忘れてた。

私は、慌てて口に手を当てる。