悠太の家に着くと、店先には見たことのない黒い車が止まっていた。

この町にものすごく不似合いな高級車は、しっかりとワックスが塗りこまれ宝石の様にピカピカと輝いている。
すごーい。悠太んち、新車買ったんだ! 
しかもベンツ! うわ、初めて見たよ、生ベンツ!


興奮し、その黒い宝石を穴が開きそうな程に凝視すると、ナンバーに違和感を感じた。


ん? 品川……?


この町に縁のなさそうな都会のナンバープレートに首を傾げる。

なんだ、親戚が来てるのか。


この町で外車が走る日がついにやってきたのかと期待したのに。


少しがっかりし眉が八の字になる。


冷静になってみれば、こんな田舎の個人事業主にベンツなんか買えるわけないか!と、商店街の店主達全員を敵に回しそうな結論に達した。