カツ、カツ、とホームに響く音を立てながら待合室に向かう。

小さな待合室の木のベンチに、制服姿の少年がヘッドフォンを付けてひとりで座っていた。

少年は彼女に気が付くと満面の笑みでヘッドフォンを外す。笑うと細い目が更に細くなった。


「おかえり、志津」


「……ただいま」


あの頃と変わらない声で彼女が笑顔で呟くと、少年の姿は見えなくなって、あとには古びた木のベンチがぽつんと寂しく残っていた。

彼女は少年が消えるのが分かっていたかのように微笑むと、待合室を後にした。

古びた駅のドアを引くと、初夏の眩しい日差しがさんさんと彼女を照らす。


「……久々っー!!」


都会的な格好とはおおよそ似つかわしくない大きな声で叫ぶと、志津はお腹が見えるほどに大きく伸びた。