体全体を、湿った気だるい空気が包み込む。


夏が戻ってくる。

大粒の涙が付いた睫毛でそっと目を開くと、悠太は居なくなっていて、たくさんの蛍がふたりを囲んでいた。


蛍がゆっくりと空に向かって飛んでゆく。


真っ黒だった空が優しい光に包まれていた……。


「悠……っ」


空に向かって叫ぼうとしたけれど、陸の手が無言で制した。



私も無言で頷く。

もう呼び止めない。

だから安心して天国へ行ってね。


うるさいふたりの居ない世界でしばらくのんびりしていて。


何十年か後には、またうるさい日々が戻ってくるだろうけど、変わらない笑顔で迎え入れてね。




2度も奇跡をくれた神様。ありがとう。

最後に大好きな君に逢えて、よかった……。