「帰ってくるの!」


「は?」


陸の眉間に寄った皺はそのままだ。


「悠太が帰ってくるの!!!!」


ぽかんと口を開けたまま、陸の息が止まった。

セミの鳴く声だけが夕暮れの石段に流れる。


「う……そ……」


「嘘じゃないよ!! 手紙が来たの!!」


チャックを閉めていなかったカバンから手紙を出すと、陸に渡す。


「ここ見て!!」


ひったくる様にして奪うと、陸は手紙を開き、慌しく手紙に視線を走らせた。


「……近々帰ると思う……陸によろしく……」


確かめる様に、ゆっくりと最後の2行を声に出す。


「本当だ……」

「ね!! ね!? ね!?」


陸は、ぱっと顔を上げると、頬を紅潮させて歓声をあげた。


「やったー!! 悠太ー!!」

私もつられて叫ぶ。


「悠太ーっ!!」


嬉しくて嬉しくて、何度も叫んだ。


陸もずっと待っていたに違いない。
喜び方をみて、同じ気持ちだったと知った。


「きゃー!!」


「悠太が帰ってくるぞー!!」


大騒ぎするふたりを包み込むようにして冷たい風が吹き抜けた、その時だった。






「相変わらずうるせぇなぁ」





ふたりの鼓動が止まる。

石段の下の方から低い声がした。懐かしい、すごく懐かしい声が。