ぼんやりしていた陸の顔がどんどんはっきり見えてくる。

陸の「ばか!止まれって!」という焦る声がようやく聞こえたけれど、今更止まれない。


トップスピードのまま一直線に走り続ける。


「危ない危ないっ!!」


と腕を広げた陸の胸に、ど―ん、と派手に激突した。


「痛っ!」


そう呻いた陸は、左腕で手すりを掴んで右腕で私を抱き留めるという、石段から転げ落ちるギリギリの姿勢。

陸が腕の筋肉を鍛えていなかったとしたら、2人とも石段から転げ落ちていたかもしれない。


「死ぬ気か! お前!!!」


顔を真っ青にして叫ぶ陸に抱きついたまま、真顔でじいっと陸を見つめる。


「何笑ってんだよ……気持ち悪い」


陸は怪しむような目で吐き捨てたけど、今は陸の悪口も気にならない。にたぁと笑って見せる。

怒らない私に、陸はますます怪訝な顔をした。


「何だよ……」